副業をはじめて最初の壁、確定申告。色々調べてみるけれど、収入金額や所得金額、合計所得金額やら、色々な〇〇金額が出てきますよね。今回はこの中の所得金額について、すっきりと頭の中を整理していきたいと思います。所得税における所得金額という概念がわかるようになると、確定申告の時はもちろん、所得制限〇〇〇万円まで、や、収入いくら?などのように問われた時、迷わないよになると思います。
1.収入金額と所得金額の違い
まず大前提の所得金額と収入金額の決定的な違いをはっきりと区別しましょう。その違いは「必要経費」を引いたか引いていないかという点です。
必要経費は例えば物を仕入れて売っているような場合(事業所得・雑所得)なら、その仕入れにかかった品物や売ったものを包装する包み紙、ボールペン、メモ帳、商売をしている場所を借りているならその家賃、水道光熱費などです。収入に直接結びつく必要な費用です。
しかしあとで解説するように所得税において所得の種類は10に分かれていて、その所得のうちの給与所得の必要経費って何?給与をもらっているけれど領収書など残していないよ!と思うかもしれませんが、それぞれの所得については、その所得の性質に応じた控除金額(これを経費の代わりにしてくださいみたいな感じです)がはじめから決められているのです。
例えば
・事業所得ならば、「売上金額」が収入金額となり「売上金額ー必要経費」が所得になるのです。(青色申告で青色申告特別控除を受ける場合は、青色申告控除額を差し引いた後の金額が所得です。)
・給料所得ならば、給与所得の源泉徴収票の「支払金額」が収入金額で、「給与所得控除後の金額」が所得金額です。ここで注意。毎月通帳に入ってくるお給料の額は、源泉所得税、住民税、社会保険料などが差し引かれている金額で、給料所得金額ではないのでご注意を。
2.10種類の所得金額
所得税法の一番の特徴と言えば、所得の性格によって10種類の所得に区分している所です。一般的に、得られるすべての所得を同じように計算し税金をかけると不公平となる可能性があるので、所得の性質によって次のいずれかに分類され所得に分け、税の課税対象として計算します。
ただし入ってきたお金がすべて10の所得に分類されるのではなく、中には社会政策上の理由などにより一部非課税とされる所得もあります。(ん~ややこしや)
①給与所得
②事業所得
③不動産所得
④一時所得
⑤雑所得
⑥譲渡所得
⑦配当所得
⑧利子所得
⑨退職所得
⑩山林所得
※非課税所得
また所得税は、各所得ごとに計算した所得を合算しそこから所得控除(医療費控除、生命保険控除、扶養控除、配偶者控除、基礎控除など)を差し引いた金額に税率を乗じて計算する総合課税と、
譲渡所得の一部、配当所得の一部、退職所得、山林所得などで計算した所得は合算せず、それぞれ個別に異なる税率を乗じて所得税を計算する分離課税があります。
最終的に総合課税、分離課税で計算された税金を合算し、そこから税額控除である住宅ローン控除や復興特別所得税を足したり、先払い的な源泉所得税などを引いたりして最終的に納める金額を計算するのが確定申告です。
ですのでまず自分の収入がどの所得に該当するのかを判断することが、確定申告のはじめの一歩となります。
2-① 給与所得
①給与所得:給与所得とは、勤務先から受ける給料、賞与などの所得です。給与所得者は経費の算入が基本的には認められていないので、仕事に使ったであろう経費をあらかじめ概算にて計算された給与所得控除というものを、給与収入から差し引いて給与所得を計算します。
収入金額(源泉徴収される前の金額) - 給与所得控除額 = 給与所得の金額
令和2年以降給与所得控除
給与等の収入金額 (給与所得の源泉徴収票の支払金額) | 給与所得控除額 |
1,625,000円まで | 550,000円 |
1,625,001円から1,800,000円まで | 収入金額×40%-100,000円 |
1,800,001円から3,600,000円まで | 収入金額×30%+80,000円 |
3,600,001円から6,600,000円まで | 収入金額×20%+440,000円 |
6,600,001円から8,500,000円まで | 収入金額×10%+1,100,000円 |
8,500,001円以上 | 1,950,000円(上限) |
(注) 同じ年分の給与所得の源泉徴収票が2枚以上ある場合(2か所以上給与がある場合)には、確定申告の際それらの支払金額の合計額により上記の表を適用してください。
2-② 事業所得
②事業所得:事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業から生ずる所得をいいます。主に本業として営んでおり、反復継続して所得が発生するようなときは、事業所得として計算します。
なお、農業所得は、計算するとき他の事業所得と区分して独立して計算します。
事業所得には青色申告控除や事業所得が赤字だった場合、給与所得などとの損益通算ができるなど多くのメリットがあります。
収入金額 - 必要経費 = 事業所得の金額
2-③ 不動産所得
③不動産所得:不動産所得とは、土地や建物などの不動産、借地権など不動産の上に存する権利など、他人に不動産等を使用させることによる所得をいいます。つまりは不動産の貸付で発生する所得、具体的には地代や家賃、礼金、権利金(基本的に預かり敷金は収益にはなりません。預かり敷金を返金しなくてよくなった場合に収益に計上します)などのことです。
不動産所得にも事業所得と同様に、 青色申告控除や事業所得が赤字だった場合、給与所得などとの損益通算ができるなど多くのメリットがあります。
収入金額 - 必要経費 = 不動産所得の金額
2-④ 雑所得
④雑所得:雑所得とは、所得のいずれにも該当しない所得をいいます。代表的なのは公的年金等(国民年金や厚生年金による老齢年金など)ほかに、先物、FXによる所得、副業による所得、講演料の受け取り、生命保険契約による年金などが該当します。雑所得はa:公的年金等、b:先物取引、c:そのほかの雑所得の3つに分類され、それぞれ異なる計算式で所得が計算されます。
雑所得で損失が出た場合、事業所得・不動産所得のメリットである給与所得などと相殺できる損益通算が認められていません。しかし不動産所得などで損失(赤字)が出た場合は、雑所得をその損失と相殺することはできます。
公的年金等: 収入金額 - 公的年金控除額 = 雑所得の金額①
公的年金以外: 収入金額 - 必要経費 = 雑所得の金額②
①と②両方ある場合の雑所得: 雑所得の金額① + 雑所得の金額②
2-⑤ 一時所得
⑤一時所得:一時所得とは、a:営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外のもの(臨時的・偶発的)であって、b:労務その他の役務の対価(働いていことによって得たものでないこと)としての性質や、c:資産の譲渡による対価としての性質を有しない d:一時の所得をいいます。
- 懸賞や福引の賞金品、競馬や競輪の払戻金
- 生命保険の一時金や損害保険の満期返戻金(いずれも受取人が契約者として保険料を負担していた場合)
- 法人から贈与された金品
(注)これらの所得でも一時所得に該当しない場合があります。詳しくは、国税庁HPを参照。 - 落とし物を拾った人がもらう報労金(お礼)
- 借家人が立退きの際にもらった立退料(ただし事業目的での借家人が売上補填の為にもらう立退料は事業所得になります)
- 時効により取得した資産 など
※宝くじやサッカーくじも一時所得に該当するのですが、他の法律で所得税を課さないこととされていますので、これらの払戻金については申告の必要はありません。(・∀・)イイネ!!
収入金額 - 必要経費 - 特別控除額(50万円) = 一時所得の金額
一時所得の金額は、その所得金額の1/2に相当する金額を、給与所得などの他の所得の金額と合計して総所得金額を算出します。つまり、一時所得金額の1/2が総合課税の対象となります。
2-⑥ 譲渡所得
⑧譲渡所得:譲渡所得とは、土地、建物、ゴルフ会員権などの資産の譲渡、つまり販売が目的でない資産の譲渡に関わる所得をいいます。販売が目的である事業用の商品などの棚卸資産、山林などを譲渡することによって生ずる所得は、譲渡所得となりません。
譲渡所得は、譲渡する資産によって適用される課税方式が分離課税(ほかの所得と分けて税金の計算をする)と総合課税(ほかの所得と合算して税金の計算をする)に分けられ扱いが異なり、さらに分離課税においては長期・短期で税率が異なったり、総合課税においては、短期譲渡所得の金額は全額が総合課税の対象になりますが、長期譲渡所得の金額はその2分の1が総合課税の対象になり、とたいへん混乱しやすいです。
※税率についてはまたの機会にしてここでは譲渡所得について説明しますね。
・総合課税:ゴルフ会員権、貴金属など
・分離課税:株式、投資信託、債券、土地や建物
総合譲渡所得 | 土地建物等以外の譲渡所得 車両機械等を譲渡した場合に生じる所得 短期譲渡所得・・所有期間が5年以下 長期譲渡所得・・所有期間が5年超 | ①短期譲渡所得のみの場合 収入金額-取得費・譲渡費用-特別控除額(50万円) ②長期譲渡所得のみの場合 収入金額-取得費・譲渡費用-特別控除額(50万円) *課税される長期譲渡所得は、上記で求めた金額の2分の1 *特別控除額は、短期譲渡所得と長期譲渡所得あわせて 最大50万円。両方あるときは短期譲渡所得から先に控除します。 |
分離譲渡所得 | 土地建物等の譲渡所得 短期譲渡所得・・所有期間が5年以下 長期譲渡所得・・所有期間が5年超 株式等の譲渡所得 | ①土地建物等(短期・長期譲渡所得ともに) 収入金額-取得費・譲渡費用-特別控除額 * 特別控除とは、土地や建物の譲渡に関する特別控除のことです。公共事業のために売却したときの5,000万円の控除、マイホームを売却したときの3,000万円の控除、などがあります。 ②株式等 収入金額-取得費・譲渡費用 |
2-⑦ 配当所得
⑦配当所得:配当所得とは、出資者や株主が受け取る法人の剰余金や利益の配当、投資法人からの金銭の分配、投資信託の収益の分配などによる所得のことです。
なお、配当所得は配当の支払時に源泉徴収される所得で、原則は確定申告を必要としますが、一定の配当については確定申告不要制度の選択もできます。
配当所得については、配当控除というせいどがあり、国内株式等の配当等について、総合課税分として確定申告をした場合に適用されるされます。
配当所得についてまとめると、3種類の納税方法があるのです。
- 申告不要制度 確定申告を行わないで源泉徴収のみで完結させる。
- 総合課税制度 配当以外の他の所得(給与等)と合算し、所得税を計算する方法です。この場合は配当 控除の規定が適用されます。
配当による収入(源泉徴収前の額)-取得に要した借入金の利子=配当所得金額 - 申告分離課税制度 他の所得とは合算はしない代わりに、上場株式等の損失との損益通算をすることができる方法です。配当控除の適用はありません。
配当による収入(源泉徴収前の額)-取得に要した借入金の利子=配当所得金額
2-⑧ 利子所得
⑧利子所得:利子所得とは、預貯金や公社債の利子並びに合同運用信託、公社債投資信託等の収益の分配に係る所得をいいます。
利子所得は対象が限られており、一般的に利子といわれるものでも、個人間の貸付による利子、金融業者として金銭を貸付けたときに得た利子などは、利子所得には含みません。
よく通帳に記載されている預金利息の金額は、所得税等が徴収されたあとのものです。利子所得は経費や控除がなく、税金を再計算する必要がないため改めて確定申告をする必要はありません。ただし国債や地方債などの特定公社債等の利子については申告分離課税の対象となり、確定申告の有無を選択できます。
利子所得=収入額(源泉徴収前の額)
2-⑨ 退職所得
⑨退職所得:退職所得とは、退職により勤務先から受ける退職手当や厚生年金基金等の加入員の退職に基因して支払われる厚生年金保険法に基づく一時金、適格退職年金契約による退職一時金などをいいます。
退職所得は、収入金額から退職所得控除を差し引き、さらに差し引いた金額を1/2にします。
(収入額(源泉徴収前の額)-退職所得控除額)×1/2=退職所得
ただし、特定役員(勤続5年以下)の退職手当は、退職所得の計算上1/2はしません。
【退職所得控除】
勤続年数 | 退職所得控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円×勤続年数(最低80万円) |
20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
なお退職所得は原則として他の所得と分離して所得税額を計算する分離課税です。かつ退職金等の支払の際に「退職所得の受給に関する申告書」を提出している人については、退職金等の支払者が所得税額及び復興特別所得税額を計算し、その退職手当等の支払の際、退職所得の金額に応じた所得税等の額が源泉徴収するため、原則として確定申告は必要ありません。
2-⑩ 山林所得
⑩山林所得:山林所得とは、山林を伐採して譲渡したり、立木のままで譲渡することによって生ずる所得を いいます。ただし、山林を取得してから5年以内に伐採又は譲渡した場合には、山林所得ではなく、 事業所得又は雑所得になります。山林所得は、ほかの所得とは合算しない分離課税の対象であり、5分5乗方式(計算式:(課税山林所得金額×1/5×税率)×5)という独自の計算方法で税額を出します。
山林所得=山林譲渡による総収入金額-必要経費-特別控除(最高50万円)
必要経費は植林費などの取得費のほか、維持管理費、伐採費、搬出費などのこと。
伐採又は譲 渡の15年前の12月31日以前から山林を所有している場合は、
特例により、収入金額から伐採費などの譲渡費用を差し引いた額から50%相当を概算経費控除
として必要経費にできる。
2-※ 非課税所得
非課税所得:非課税所得は、所得金額の計算から除かれますから、非課税の適用を受けるための手続は原則として必要ありません。つまり確定申告は必要ありません。
非課税所得に分類されるのは、財形住宅貯蓄や財形年金貯蓄の利子所得、給与所得者の通勤手当(上限あり)出張手当(通常必要と認められるもの)、メルカリやフリーマーケットなどで生活用の家具や衣類、電化製品など不用品となったものを譲渡した場合、宝くじの当選金、損害保険金、失業保険、傷病手当、健康保険などからの給付金、生活保護の給付金、遺族年金、非課税口座内・未成年者口座内の少額上場株式等に係る配当等(いわゆる「NISAなど」)、などです。
3.まとめ
長くなってしまいました。所得税はこのように10の所得に分かれ、それぞれ所得の出し方が決められています。副業をはじめたり、臨時収入が入ったりしたときは、まず自分は確定申告が必要なのか、必要ならばどの所得になるのかをまず最初に考えます。給与所得、事業所得、不動産所得、雑所得、一時所得が一般的に出てくる所得だと思います。
これらの所得金額を算出してから、医療費控除、生命保険控除、配偶者控除、などの所得控除を差し引いて所得税を計算し、住宅ローン控除など税額控除をそこから差し引いて、納付する金額を算出します。