最近は国境を越えて結婚することは珍しいことではないですね。
また、子どもが海外に留学などもよく聞きますね。
日本の経済は縮小していく。。と言われながらも、まだまだ日本は世界的にみれば裕福な国です。
食べ物、インフラ、治安、社会保障、技術、伝統などなど日本は素晴らしい文化、技術を持っている住みやすくて魅力的な良い国です。
そんな日本に家族を養う為に働きに来ている外国人労働者もいます。
日本に住んでいる人達の、海外に住んでいる扶養親扶養の控除についてのお話です。
国税庁の見解について
給与等について、非居住者である親族に係る扶養控除等の適用を受ける場合には、親族関係書類及び送金関係書類(これらの書類が外国語で作成されている場合には、その和訳文を含みます。)を源泉徴収義務者に提出又は提示しなければならないこととされています。
(https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/kokugai/index.htm)国税庁より
親族関係書類
「親族関係書類」とは、次の①又は②のいずれかの書類(日本語での翻訳文も必要です。)で、非居
住者である親族があなたの親族であることを証するものをいいます。
① 戸籍の附票の写しなど日本国又は地方公共団体が発行した書類及び非居住者である親族の旅券の写し
② 外国政府又は外国の地方公共団体が発行した書類(非居住者である親族の氏名、生年月日及び住所又
は居所の記載があるものに限ります。) 国税庁より
本当に親族なのか、国外の事となると調べるは大変なので、扶養控除の対象にしようとしている人が本当に親族なのかを証明する事は必要だと思います。納得出来ますね。
送金関係書類
「送金関係書類」とは、次の書類で、居住者がその年において国外居住親族の生活費又は教
育費に充てるための支払を、必要の都度、各人に行ったことを明らかにするものをいいます。
① 金融機関の書類又はその写しで、その金融機関が行う為替取引により居住者から国外
居住親族に支払をしたことを明らかにする書類
② いわゆるクレジットカード発行会社の書類又はその写しで、国外居住親族がそのクレジットカード発行会社が交付したカードを提示してその国外居住親族が商品等を購入し
たこと等により、その商品等の購入等の代金に相当する額の金銭をその居住者から受領
した、又は受領することとなることを明らかにする書類
なるほど、なるほど、非居住者を扶養として控除をするためには、ちゃんと送金した事実が必要という事。納得。
と思っていたのですが、「各人」。。
「各人」 はちょっと厳しすぎでは?と思いました。
なぜなら、何かの事情で働けないご両親がいたとして16歳以上の学生の弟や妹も扶養とするのならば、未成年の弟、妹宛にも改めて送金しなければいけないという事。
こういった場合は、送金する相手が未成年の場合、両親あてに送金をするのが自然なのでは?と疑問を持ちました。海外では16歳、17歳はもう大人なのでしょうかね?
未成年の弟や妹達を扶養にして控除を受けるためには、国外から来た外国人労働者は、初めからこの制度の事を周知していなければ扶養控除を受けることが出来きません。あえて各人へ送金する必要があるので、1年目の外国労働者の方が自分自身の事でいっぱいになっていると考えると、なかなか厳しいと思いまいた。
平成29年以前の国外居住者親族
以前の国外居住者親族は親族関係書類、送金関係書類は必要とされていませんでした。
なので、日本には日本の当たり前、海外には海外の当たり前があると思いますが、国外扶養親族として6親等以内の血族、3親等以内姻族として扶養控除の記入欄が足りなくなるくらい申告して、扶養控除だけで税負担を逃れるケースがみられたことは事実です。それらを是正するために今のような要件が出来たのだと思われます。
しかし、本来の扶養となるべく人を扶養にするためには、送金宛が違うということで扶養となれないのは厳しすぎてしまうのではないかと首をかしげてしまいました。国外から自国の家族の生活のために日本に働きにきた外国人労働者は、それでなくてもなれない土地へきて、言葉も十分に理解できない状況では難しい方もいるのではないだろうかと、思ってしまいました。
令和5年以降の国外居住者親族
さらに、令和2年の税制改正で国外扶養親族に関する扶養控除の見直しが行われました。
この改正は令和5年分以降の所得税から施行されます。
現行の国外居住者親族の扶養控除等の適用を受けるために、国外居住者各人の「親族関係書類」及び「送金関係書類」を添付すれば、国外居住者の所得は日本に住む我々と同じ国内所得で判断されますので、国外所得がいくらあっても扶養親族要件を満たしてしまい、その送金額も決まりはなく1円でも送金してしまえばクリアできてしまいます。
これらの問題点を考慮して新たな要件が加えられたのです。
- 現行の扶養控除等の適用対象者は16歳以上であるが、そこから30歳以上70歳未満の者を除く。
- ただし30歳以上70歳未満の者であっても、次のいずれかの条件を満たす場合は適用対象外とする。
(1)留学により非居住者となった者(留学ビザ等による照明が必要)
(2)障碍者(障害者控除の適用対象者)
(3)その年における生活費または教育費に充てるための支払を38万円以上受けている者(送金関係書類 を提出し38万円以上送金したことを証する事)
つまりは、30歳以上70歳未満の者は、留学生・障碍者・そして38万円以上の送金書類がある者以外の国外居住親族は、扶養控除等の適用対象外になるという事ですね。
まとめ
長い間、国外居住者の扶養に関する問題点については手つかずのままでありましたが、近年これらの問題点の是正が徐々に増えてきたと感じます。
これからはさらに手つかずであった規定、時代にそぐ合わないこととなった規定などは厳しく見直されていくことでしょう。
国外居住者の扶養については、いままで多数の扶養親族として申告することにより税逃れをして来た人たち等にメスをいれ、送金等に基準を設け、実質的に扶養していないと扶養控除が受けられないとして国内の扶養基準と近づけさせました。国外における所得を確認するのは難しいので、それに代わるものとして実際の送金額という条件をつけたわけなのですね。
もちろんこの改正は国外居住の外国人だけではなく、国外居住の日本人にも適用されます。
世界との繋がりがどんどん容易になっていく昨今、こうした国外居住者についての課税、控除などの問題はますます身近なことになっていくことでしょう。国でも色々な策をあの手この手で対応してくれていることがうかがわれます。いかに平等に課税をするのか、目まぐるしく変わっていく金融取引への対応など、国の対応も急がされている感じですが、もちろん我々も無関心ではいられないですね。